2026年9月1日、日本の長期金利の代表的な指標である新発10年国債の利回りが、一時3%台に上昇しました。約30年ぶりの高い水準です。同じ9月1日には、全期間固定型住宅ローン「フラット35」の金利も発表されました。借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下の場合の最も多い金利は年3.46%。8月の3.29%から0.17ポイント上昇し、現在の制度になった2017年10月以降で過去最高となりました。

「長期金利が3%になったのなら、私の住宅ローンも3%になるの?」ニュースを見て、このように心配された方も多いのではないでしょうか。結論から言うと、長期金利が3%になったからといって、すべての住宅ローン金利が一律に3%になるわけではありません。固定金利と変動金利では、金利が動く仕組みが違います。これから住宅ローンを借りる人と、すでに返済している人でも、受ける影響は異なります。

長期金利3%は、住宅ローン金利そのものではない

長期金利とは、一般的に新しく発行された10年国債の利回りを指します。少し難しく聞こえますが、固定型住宅ローンの金利を決める際の「仕入れ値」に近いものと考えると、分かりやすいでしょう。銀行が住宅ローンという商品を販売するとき、その仕入れ値にあたる長期金利が上がれば、固定型住宅ローンの金利にも上昇圧力がかかります。ただし、長期金利と実際の住宅ローン金利は同じものではありません。

「3%」でも、すべて同じ金利ではありません

2026年9月の金利金利水準主に影響を受ける人
長期金利(新発10年国債利回り)一時3%台固定金利の今後を考える際の指標
フラット35年3.46%9月に新しく借りる人
大手行の10年固定・最優遇金利年3.45~4.195%新規借入、固定期間を選択する人
大手行の変動金利主に年1%台新規借入者。既存契約は反映時期が異なる

※住宅ローンの適用金利は、金融機関、審査結果、融資率、借入条件、団体信用生命保険、金利優遇などによって異なります。
※フラット35は、借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下の最頻金利です。

この表を見ると、「長期金利3%=住宅ローンもすべて3%」ではないことが分かります。ただし、長期金利の上昇は、固定型住宅ローンにすでに影響を与えています。

固定金利と変動金利では「動くスイッチ」が違う

住宅ローン金利は、大きく固定金利と変動金利に分かれます。それぞれ、金利を動かすスイッチが違います。

固定金利は、10年国債利回りなどの長期金利の影響を受けます。そのため、将来の金融政策や物価上昇を先回りするように動く傾向があります。

一方、変動金利は、日銀の政策金利や銀行の短期プライムレートなどの影響を受けます。今回、長期金利が3%台になったからといって、返済中の変動金利が直ちに3%になるわけではありません。しかし、長期金利の上昇には、物価上昇への警戒、日銀の追加利上げ観測、海外金利の上昇、日本の財政に対する懸念などが影響しています。今後、日銀が追加利上げを行い、銀行が短期プライムレートを引き上げれば、変動型住宅ローンにも段階的に影響が及ぶ可能性があります。

固定金利には、すでに影響が出ている

2026年9月、大手銀行は10年固定型の住宅ローン金利をそろって引き上げました。最優遇金利は、三菱UFJ銀行が年3.63%、三井住友銀行が年3.70%、みずほ銀行が年3.45%、りそな銀行が年3.955%、三井住友信託銀行が年4.195%となっています。

また、フラット35の9月の最頻金利も年3.46%となり、現行制度での過去最高を更新しました。

つまり、今回の長期金利3%は、「これから住宅ローンに影響するかもしれない」という段階ではありません。固定型住宅ローンには、すでに影響が表れています。

変動金利も一部の銀行で上昇

今回、注目したいのは固定金利だけではありません。2026年9月は、利用者の多い変動型住宅ローンについても、一部の大手銀行が金利を引き上げました。代表的な新規借入時の最優遇金利を、8月と9月で比較すると、次のようになります。

金融機関 2026年8月 2026年9月 8月から9月の変化
三菱UFJ銀行 年0.945% 年1.195% +0.250ポイント
三井住友銀行 年1.275% 年1.525% +0.250ポイント
みずほ銀行 年1.025% 年1.025% 据え置き
りそな銀行 年0.950% 年0.950% 据え置き

※2026年9月1日時点。新規借入時の代表的な最優遇金利です。適用金利は、審査結果、借入条件、融資率、借入期間、団体信用生命保険、各種優遇などによって異なります。

三菱UFJ銀行と三井住友銀行は、変動金利を前月から0.25ポイント引き上げました。一方、みずほ銀行とりそな銀行は、9月の新規借入金利を据え置いています。ただし、ここで注意したいのは、「9月に据え置かれた銀行は、今後も上がらない」という意味ではないことです。

例えば、みずほ銀行は9月の新規借入金利を年1.025%~としていますが、短期プライムレートの改定を受け、該当する住宅ローンについては、2027年1月返済分から年1.275%~を適用すると案内しています。

金利上昇の影響は、すべての銀行、すべての利用者に同じタイミングで届くわけではありません。銀行ごとの見直し時期や契約内容によって、時間差があるのです。

なお、この表は「2026年9月に新しく借りる人に提示される代表的な金利」を比較したものです。

すでに変動金利で返済している人の金利や返済額が、9月から直ちに同じように変わるわけではありません。既存の利用者への影響については、後ほど詳しく説明します。

これから家を買う人に起きること

固定金利だけでなく、変動金利も一部の銀行で上がり始めました。では、これから住宅を購入する人には、具体的にどのような影響があるのでしょうか。金利が上がると、「毎月の返済額が増える」と考えがちです。しかし、起きることはそれだけではありません。毎月返済できる金額が同じなら、金利が上がるほど借りられる金額は少なくなります。例えば、毎月の返済額を一定範囲に収めようとすると、次のような選択が必要になります。

  • 購入する住宅の予算を下げる
  • 頭金を増やす
  • 返済期間を延ばす
  • 夫婦の収入を合算する
  • 住宅購入の時期を見直す

つまり、金利上昇は住宅ローンの値上げであると同時に、「同じ収入で買える住宅の価格」を下げる力でもあるのです。注意したいのは、住宅ローン審査に通る金額と、安心して返せる金額は同じではないことです。現在の金利で返済できるかだけでなく、金利がさらに0.5%、1%上がった場合でも、教育費や老後資金を準備できるか確認しておく必要があります。

すでに変動金利で返済している人はどうなる?

現在、変動金利で返済している人は、ニュースを見てすぐに固定金利へ変更する必要はありません。まず確認したいのは、次の4項目です。

  1. 現在適用されている金利
  2. 次に金利が見直される時期
  3. 毎月返済額が見直される時期
  4. 住宅ローンの残高と残り期間

変動型住宅ローンでは、一般的に金利は半年ごとに見直されます。ただし、金利が上がっても毎月返済額を5年間変えない「5年ルール」や、返済額の増加を従来の125%までとする「125%ルール」がある商品もあります。一方、これらのルールを採用していない金融機関もあります。必ず自分の契約内容を確認してください。また、5年ルールがあるから安心とは限りません。毎月返済額が変わらなくても、返済額の中で利息が占める割合が増え、元金の減り方が遅くなることがあるからです。見た目の返済額が同じでも、住宅ローンの中身が変わっている可能性があります。

今、やってはいけない3つのこと

1.慌てて固定金利へ変更する

固定金利へ変更すれば、一定期間の返済額を確定できます。今後さらに金利が上がった場合の影響を抑えられることがメリットです。一方、現在の固定金利は変動金利よりかなり高い水準です。固定金利への変更は、将来の安心を買う代わりに、現在の返済負担を増やす選択でもあります。まずは、固定金利に変更した場合の毎月返済額と総返済額を確認しましょう。

2.預貯金をすべて繰上返済に使う

金利が上がるほど、繰上返済による利息軽減効果は大きくなります。しかし、一度住宅ローンの返済に使ったお金は、病気、介護、教育費、自宅の修繕などで必要になっても、簡単には取り戻せません。繰上返済をする場合も、生活費の半年から1年分や、近い将来必要になるお金は手元に残しておきましょう。

3.「もう家は買えない」と結論を急ぐ

金利上昇は、住宅購入を考えている人にとって逆風です。しかし、金利だけを見て住宅購入の可否を決めることも適切ではありません。住宅価格、頭金、住宅ローン減税、フラット35の金利引下げ制度、家賃との比較、今後の家族構成などを含め、総額で判断する必要があります。大切なのは、「いくら借りられるか」ではなく、「暮らしを守りながら、いくらまで返せるか」です。

金利上昇にはプラスの面もある

金利上昇は、住宅ローンを借りる人にとっては負担増につながります。一方で、預金金利や個人向け国債などの金利が上昇するというプラスの面もあります。特に、まとまった預貯金を普通預金に置いたままにしている人にとっては、預け先を見直す機会になります。住宅ローンを借りている人は「借りる金利」だけでなく、「預ける金利」も確認して、家計全体で判断することが大切です。などによって異なります。今後の金利動向を正確に予測することはできません。

変動金利一択の時代は終わった

長期金利が3%台になったことは、日本が本格的な「金利のある時代」に入ったことを象徴する出来事です。住宅ローンを取り巻くステージは、明らかに変わりました。

これまでのような「金利はほとんど上がらない」という前提で、当初金利の低い変動金利を選んでおけばよい時代ではありません。これから住宅ローンを借りる人は、変動金利だけでなく、固定金利も選択肢に入れて比較する必要があります。ただし、これは「これからは固定金利を選んだ方がよい」という意味ではありません。

固定金利は将来の返済額を確定できる一方、現在の変動金利よりも高く、借りた直後から返済負担が大きくなります。金利上昇が心配だからと高い固定金利を選び、その結果、教育費や老後資金を準備できなくなっては本末転倒です。

一方、変動金利は今後さらに上昇する可能性があります。それでも、借入金額が比較的少なく、住宅ローン残高や返済期間、収入、預貯金などに十分な余裕がある家庭なら、金利が上昇しても家計で吸収できる場合があります。反対に、借入金額が大きく、毎月の返済が家計の限界に近い家庭では、わずかな金利上昇でも教育費や老後資金に影響する可能性があります。

私が住宅ローン相談で大切にしているのは、「変動と固定のどちらが得か」だけを比べることではありません。金利タイプを選ぶ前に、そもそも借り過ぎていないかを確認することです。

住宅ローンは、大きな船によく似ています。波が少し高くなっても耐えられる船なら、変動金利という航路を進むこともできます。しかし、荷物を限界まで積んだ船は、小さな波でも大きく揺れます。つまり、金利上昇に耐えられるかどうかを決めるのは、金利タイプだけではありません。借入金額と、家計にどれだけ余力を残しているかです。

これから住宅ローンを借りる人は、「今の金利なら返せるか」ではなく、金利がさらに0.5%、1%上がっても、教育費や老後資金を準備しながら返していけるかを確認してください。

住宅ローン審査に通る金額と、人生を守りながら返せる金額は同じではありません。では、借入金額がいくらまでなら、変動金利の上昇に耐えられるのでしょうか。また、どのような家庭が固定金利を検討した方がよいのでしょうか。次回のコラムでは、借入金額と金利上昇によって毎月返済額がどれだけ変わるのか、具体的な数字を使って解説します。

参考資料