子や孫に「してあげたい」。でも、自分の老後は大丈夫?

2026年10月1日から、楽天証券やSBI証券などで「こどもNISA」の口座開設の受付が始まります。制度を利用した投資が始まるのは、2027年1月からです。

「孫の将来のために、積立のお金を出してあげようか」
「子どもたちの教育費の負担を、少しでも軽くしてあげたい」

こうした思いを持つ方もいらっしゃるでしょう。

一方、50代・60代は、子どもの教育費がようやく一段落し、ご自身の退職後の暮らしを具体的に考え始める時期でもあります。

「これからは、自分たちの老後のために準備したい。でも、家族が困っていたら力になってあげたい」

その両方の気持ちを、大切にしてよいのです。

家族の役に立てることは、お金を使う喜びの一つです。だからこそ、「してあげたい気持ち」と「無理なく出せる金額」を一緒に考えることが、家族のお金の計画の出発点になります。

こどもNISAとは? まず知っておきたい基本の仕組み

こどもNISAは、NISAのつみたて投資枠を0~17歳にも広げ、子どもの将来に向けた資産づくりを支える制度です。

通常、投資で得た利益には税金がかかりますが、NISA口座では運用益が非課税になります。子ども名義の口座で、親権者等が管理しながら積み立てていく仕組みです。

項目こどもNISAの概要
制度の利用開始2027年1月から
対象年齢0~17歳
年間投資枠子ども1人につき年間60万円
非課税保有限度額600万円(購入金額で管理)
投資対象つみたて投資枠の対象となる、長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託
投資方法積立による購入
非課税保有期間無期限
口座の管理親権者等が行う
お金の引き出し原則として制限あり。12歳以降は、子どものための使い道で、本人の同意など一定の条件を満たせば可能
18歳以降成人向けのNISAへ自動的に移行

※制度概要は金融庁および証券会社の公表資料に基づきます。払出しには、子どもの同意を示す書面や親権者等による申出書などが必要です。受付時期・必要書類・年齢の判定など、具体的な取扱いは利用する金融機関の最新案内をご確認ください。

非課税保有限度額の600万円は、購入した金額をもとに数えます。運用で増えた利益が、この枠を使うわけではありません。

早くから資産づくりを始められ、運用益が非課税になることは利点です。ただし、元本保証はなく、投資した金額を下回る可能性があります。 また、引き出しにも条件があるため、いつでも自由に使える預貯金と同じようには考えられません。

年間60万円は、家族が埋めなければならない目標額ではありません

年間60万円という枠は、毎月同額で積み立てるなら月5万円に相当します。

しかし、月5万円を積み立てなければならないわけではありません。月1万円など、家計に合った金額で利用できます。

ここで、50代・60代の方に考えていただきたいことがあります。

制度の上限をいくら使えるかと、ご自身がいくら援助できるかは、別の話です。

「せっかく非課税なのだから、できるだけ多く入れてあげたい」

そう思ったときこそ、ご自身の退職後の暮らしにも目を向けてみてください。

これは、こどもNISAに限りません。子どもの結婚や住宅購入、独立後の生活を応援するときにも、同じことがいえます。

月1万円の応援も、10年間なら120万円

例えば、子や孫のために月1万円を援助するとします。

月々では出せそうに感じる金額でも、期間を延ばして見ると、家計への影響が見えてきます。

毎月の援助額(家族全体への合計)1年間の支出10年間の支出
1万円12万円120万円
2万円24万円240万円
3万円36万円360万円

※毎月同額を続けた場合の単純計算です。援助する側の支出額であり、運用成果を示すものではありません。

孫が3人いて、それぞれに月1万円ずつ援助するなら、合計は月3万円。10年間では360万円になります。

今は給与から出せても、退職後は預貯金を取り崩して援助することになるかもしれません。

だからこそ、「毎月いくら」だけでなく、「いつまで続けると、全部でいくらになるか」まで考えておきたいのです。

貯金2,000万円でも、自由に使える2,000万円とは限りません

通帳にまとまったお金があると、「少しくらい援助しても大丈夫」と思うかもしれません。

しかし、そのお金には、すでに将来の使い道が決まっている場合があります。

仮に、退職後の生活費が手取りの年金収入を月5万円上回り、その状態が25年間続くとしましょう。

5万円 × 12か月 × 25年 = 1,500万円

これは、年金だけでは足りない生活費を補う金額です。預貯金が2,000万円あっても、この仮定では、そのうち1,500万円に「生活費を補う」という役割があります。

※説明のための仮定であり、標準的な老後必要額ではありません。物価変動、運用収益、臨時支出などは含めていません。

残りの500万円についても、すべて援助に使えるとは限りません。住宅修繕、医療・介護への備え、旅行や趣味など、これから使う予定を確認する必要があります。

貯金は、いわば「行き先の札が付いたお金」です。

残高だけで判断せず、どのお金が何のために必要なのかを整理すると、家族を応援できる範囲が見えてきます。

家族を応援するために、決めておきたい3つのこと

一つ目は、自分の暮らしのために確保するお金です。

退職後の収入と支出、住宅ローン、医療・介護や住まいの備えを確認します。配偶者がいる場合は、どちらか一人になったときの家計も考えておきましょう。

生活に必要なお金だけでなく、「これから楽しみたいこと」の費用も大切です。ご自身の希望も、お金の計画に入れてよいのです。

二つ目は、援助の総額と期間です。

「月1万円なら出せる」から一歩進めて、「まずは今年、合計12万円まで」と考えます。

子どもへの援助、お祝い、孫への積立などを合わせ、家族全体にいくら使っているかを確認しましょう。退職金から一度に渡す場合も、その後の生活を見通してから金額を決めることが大切です。

三つ目は、見直しの約束です。

「今年はこの金額で応援できるけれど、来年は家計を見て相談しよう」

最初からそう伝えておくと、収入や健康状態が変わったときにも、話し合いやすくなります。

長期の援助は、受け取る側にとって予定を立てやすい一方、援助する側が減額を言い出しにくくなることもあります。無理なく続けるために、毎年見直す機会を持ちましょう。

「今必要なお金」と「将来のためのお金」で、応援の方法を選ぶ

家族への援助には、今必要な費用を支払う方法も、将来のための資金づくりを支える方法もあります。

使う時期が近いお金を投資に回すと、必要な日に値下がりしている可能性があります。進学など、支払う時期が決まっているお金は、その日に用意できることを優先して考えましょう。

もう一つ、確認しておきたいのが税金です。

「相続税対策になるから」と、安易に贈与を始めないで

「孫にお金を渡して、こどもNISAで積み立てれば、相続税の節約にもなるのでは?」

そう考える方もいらっしゃるでしょう。

しかし、こどもNISAで非課税になるのは運用益です。贈与したお金まで、自動的に相続税の対象から外れるわけではありません。

暦年課税による贈与では、お金を受け取った人が、贈与した方の相続でも財産を受け取る場合、亡くなる前の一定期間内の贈与が、相続税の計算に加えられます。この期間は、従来の3年から、最長7年へと段階的に延長されています。

年間110万円以下で贈与税がかからなかったお金も、相続税の計算に加わることがあります。 贈与自体が取り消されるのではなく、税金を計算するときに、贈与時の金額を足し戻す仕組みです。

ただし、孫への贈与が、すべてこの対象になるわけではありません。

例えば、祖父母から相続や遺言によって財産を受け取らず、相続税の対象となる死亡保険金なども受け取らない孫は、原則として、この加算の対象になりません。一方、遺言で財産を残したり、死亡保険金の受取人に指定したりしている場合には、注意が必要です。

つまり、「誰に贈るか」だけでなく、「その人に、相続のとき何を残すか」まで含めて考える必要があるのです。

節税のつもりでお金を渡したのに、思ったほど税金は減らず、ご自身の生活費や介護への備えだけが少なくなってしまう。そんな事態は避けたいものです。

私は、相続税対策を目的にこどもNISAへの資金援助を考える場合には、贈与を始める前に、税理士に税務上の扱いを確認し、FPとご自身の老後資金を点検することをおすすめします。

「税金を減らせるか」と「お金を渡した後も、安心して暮らせるか」。この両方を確認してから、家族への贈り方を決めましょう。

※上記は暦年課税による贈与の説明です。加算対象期間は、2026年中に始まる相続では原則3年、2027~2030年は2024年1月1日から相続開始日まで、2031年以降は原則7年となります。延長された期間の贈与には、合計100万円まで加算しない措置があります。

ご自身の安心も、家族のためになる

子や孫を応援できることは、うれしいものです。そのために、ご自身が必要な支出を我慢し続けたり、将来の暮らしに不安を抱えたりする必要はありません。

私は、家族への援助を考えるときこそ、ご自身の人生後半のお金の計画を、一緒に確認していただきたいと思っています。

「いくら渡してあげたいか」とともに、「いくら残しておけば、安心して暮らせるか」。

この両方が見えてくると、家族への応援にも、自分の楽しみにも、納得してお金を使いやすくなります。

こどもNISAをきっかけに、おさえておきたいのは次の3点です。

  • 援助は月々の金額だけでなく、家族全体への総額と期間で考える。
  • ご自身の暮らしと、これから楽しみたいことに必要なお金を確保する。
  • 家計や健康状態の変化に合わせて、援助の金額を見直す。

「わが家なら、いくらまで応援できるだろう?」

そう感じたら、まずは退職後の収入と支出、資産の使い道を整理するところから始めてみませんか。

山下FP企画では、子や孫への援助と、ご自身のこれからの暮らしを両立するためのライフプランをご一緒に考えます。ご相談は、当サイトのお問い合わせ窓口よりご連絡ください。

執筆:山下幸子/CFP®・山下FP企画

テレビ・ラジオ・新聞等の取材では、50代・60代の家族への援助、退職金・年金と老後資金について、身近な家計例を用いた解説に対応しています。取材のご依頼も、当サイトのお問い合わせ窓口よりご連絡ください。

制度情報の確認日:2026年9月25日。制度概要は下記公表資料に基づきます。具体的な利用条件・手続きは、最新の公式案内をご確認ください。

参考資料:

国税庁「No.4405 贈与税がかからない場合」

楽天証券「【こどもNISA】10月1日(木)より口座開設受付開始!」

SBI証券「こどもNISAのQ&Aまとめ|申込前の疑問を解消」

金融庁「令和8(2026)年度税制改正について」