資産形成において魅力的な条件の多い積立NISAですが、メリットがかりではありません。
積立NISAを始める前の方だけでなく、積立NISAを行っている最中の方も知っておくべき注意点、リスクを回避する投資信託選びについて紹介いたします。

 

一般的によく知られている積立NISAの注意点

 

投資信託は元本保証ではないので、減る可能性があります。
資産が目に見えて減る経験をしたことのない方は不安や恐怖を抱くかもしれませんが、貯金も数字が変わらないだけで、資産価値は常に変動しています。

また、積立NISAの上限枠は年間40万円まで(繰り越し不可)、新規購入は2042年までという限られた期間での制度となっています。(※現在、制度改正浮上していますが、今のところは042年で終了)

このような制度の下では年間40万円も払う余裕がない方は、繰り越しが不可能なのでその年の上限枠を使い切れずに終わってしまいます。

さらに、積立NISAを遅くから開始した方は2042年までしか新規購入ができません。積立投資をスタートするにも、いつ始めるか?が各々の収入やライフプランにより異なるため、全年齢の全世代におすすめか?というとそうでもありません。

また、積立NISAは「早期に開始でき、年間40万円積み立てることが可能な方」に有利な制度なのですが、たとえば、20歳から始めて20年経過すると40歳・・・子供の大学の教育資金に使う、老後資金に使うにはまだ早すぎる。。。と運用し続けた場合、20年以降は課税ゾーンに突入するので、運用益非課税のメリットが受けにくくなります。(20年経過すると結局課税され、資産が大きく成長したところで、課税ではとても残念)

 

大きなリターンを求める場合は不向き

 

積立NISAのモデルとなったイギリスのISA制度は、非課税期間が無期限だったことに対し、日本の積立NISAの非課税期間は20年と限定されています。

積立NISAはじめとするインデックス投資と呼ばれるものの期待リターンは年間3~6%となっています。
上限額である年間40万円を20年間、累計800万円を5%で運用した場合でも、1.7倍にしかなりません。


あくまで、積立NISAは「リスクを抑えて長期的に資産運用する制度」なので、大きなリターンを求める場合は、債券やバランスフアンドでなく、株式など積極的にリスクをとる必要があります。

時間をミカタ、コツコツといっても投資金額が少ないため大きくお金を増やすには時間がかかりすぎます。50歳の人が、60歳以降の老後資金を積立NISAで運用する場合、すべて株式では、相場が終盤で暴落したら、浮上するのに時間がかかり、ダメージが大きいため、リスクをとってリターンを・・・がやりにくいでしょう。

 

資産の組み換え(リバランス)ができない

積立当初は、投資口数も少なく量が積みあがっていないため、投資価格の値動きは影響がありませんが、20年経過すれば、さすがに量(口数)も積みあがってきます。順調に資産が増え、さて売却しようとする直前で、株などの値動きの激しいものに投資し暴落してしまうと大変なことになります。

そうならないよう、売却しようとする年に向けて、本来なら少しづつリスクを大きいものから小さいものへ変更していく必要がありますが、積立投資は一度購入したら、組み換えはできす、その商品を持ち続けるしかありません。

つまり積立NISAはいったん購入したら、それを持ち続け必要な時(利益が出ているとき)に売却するしかありません。「必ず利益が出ているタイミングで売却」・・・・、実際のところ難しく、ある証券会社の調べでは、積立NISAは2-3年で売却されているという話。

 

積立NISAは「損益通算」が適応されない

 

投資家は毎年配当金や売却益を得ており、利益に対して20.315%の税金が発生します。
しかし、どんな投資家も毎年利益を計上できるわけではなく、時には大きな損失を抱えることもあります。
そのような損失は「損益通算」によって未来の利益と相殺し節税することができます。

損益通算とは?

過去の損失で利益を相殺し、税金を安くする制度で確定申告が必要となります。

例えば、2020年に100万円の利益、2021年に100万円の損失、2022年に100万円の利益が発生した場合、「損益通算」をしないと2020年は100万円の利益に対して、20万円の税金が発生します。
2021年は利益が0円なので税金はかかりませんが、2022年は利益の100万円に対して20万円の税金がかかり、3年間で累計40万円の税金が発生します。
ここで、「損益通算」による相殺を行うと、マイナス100万円だった2021年の損失を、2022年の利益と相殺する事ができ、20万円の節税が可能となるのです。

「損益通算」は損失が出たとき節税に役立つ制度で3年間有効ですが、積立NISAではこの「損益通算」が適応されません。
よって、積立NISAによる損失はダイレクトなダメージとなってしまうのです。

税金を過剰に支払う可能性も

 

積立NISAのメリットとして挙げられるのが「発生した利益は非課税」という点です。

例えば40万円で購入したものが80万円に膨らんだ場合、20年後に積立NISAの口座から課税口座へ移動されます。その際この80万円は「80万円で購入した投資信託」として扱われるので、税金が発生しない仕組みとなっています。

利益が発生した際に非課税になりますが、もし積立NISAで20年後に損失が発生した場合はどうなってしまうのでしょうか?

2020年に40万円で購入した投資信託が20年後に20万円に減った場合、20年後に20万円は課税口座へ移されますが、その20万円を元本に投資した場合、その利益には税金が発生してしまいます。
最初に購入した40万円と同額の40万円で売却したとしても、利益が発生していないにもかかわらず課税され税金が発生してしまうのです。これは積立NISAの大きなデメリットになります。

 

課税を回避するためには

 

積立NISAでの損失は損益通算ができない為、損失を出すくらいなら一般口座で運用する方が良い結果を得られるかもしれません。
また、20年後に積立NISAによる損失を抱えていた場合は過剰に課税される可能性もあります。

このような大きなデメリットを自分に影響させないためには、長期的に見て保有し続けることが可能なファンドを選ぶ必要があります。
日本株一国だけ、米国株一国だけと、一つの投資先に依存するのではなく、リスクを分散させるのも良いでしょう。
何より、長期にわたる投資なので、信頼した投資信託を保有することが大切です。これを選ぶのが難しいため、積立投資のフアンドはあらかじめ、国の審査をパスしたものをを入れています。選択できるフアンドも多いと迷うので、以前よりかなり絞られています。

積立NISAには、短期売却に対して意図的なデメリットが存在し、制度的に短期間で売却するとメリットが少ない構造となっています。

これは、「資産形成の上では、短期売買ではなく、バイ&ホールドが重要」という政府からの暗示ではないでしょうか。
このような、メリット・デメリットに隠された政府からのメッセージを理解したうえで積立NISAを活用してきましょう。