📚 全5回シリーズ|第3回
2027年以降の制度変更を見据え、会社員・経営者・個人事業主別に、CFP20年の実務視点で「本当に使うべき制度」を読み解きます。
📢 この記事を読んでほしい方
- ✅ iDeCoと企業型DCの違いが、いまひとつ腹落ちしていない方
- ✅ 2027年以降、掛金6万2,000円の新ルールをどう活かすべきか知りたい方
- ✅ 経営者として、iDeCoで足りるのか、企業型DCを検討すべきか迷っている方
- ✅ 会社員として、勤務先制度を使い切れているのか不安な方
- ✅ 個人事業主として、老後資金の作り方を制度から見直したい方
🔴 まず結論——「どちらが得か」は、人によって違います
先に結論をお伝えします。
iDeCoが得か、企業型DCが得か——その答えは、ひとりひとり違います。
年齢、年収、勤務先の制度、家族構成、法人か個人か、退職金の有無、何歳まで働くか。
それによって、最適な制度も、掛金額も、受け取り方も変わるからです。
私はCFPとして20年間、個人の老後資金相談、経営者の退職金設計、企業型DC導入の相談に数多く向き合ってきました。その中で痛感してきたのは、「制度の比較だけで決める人ほど、全体最適を外しやすい」という事実です。
「先生、iDeCoと企業型DC、どっちが得かだけ教えてください」
——そう聞かれたときほど、私は慎重になります。
なぜなら、本当に大事なのは「どちらが得か」ではなく、「あなたの場合、どちらをどう使うと老後資金が最適化するか」だからです。
2026年制度改正の核心
6.2万円
第2号被保険者のiDeCoは、企業年金の有無による差を整理したうえで、企業年金と共通の上限である月額6.2万円へ引き上げられる予定です。
出典:厚生労働省
💬 CFP20年の実感
制度改正のニュースが出ると、多くの方は「では何を選べば得か」と知りたくなります。お気持ちはよくわかります。ただ、老後資金づくりは制度の勝ち負けではなく、人生全体の設計です。だから私は、一般論で断言するよりも、まず地図を示し、そのうえで個別にルートを決めることを大切にしています。
📌 まず押さえるべき制度改正のポイント
1
第2号被保険者のiDeCo拠出限度額が整理・引上げ
勤務先の企業年金の有無による差異を解消し、企業年金と共通の拠出限度額に一本化したうえで、月額6.2万円に引き上げる方向が示されています。企業年金等がある方は、企業年金等と合計して6.2万円が上限です。出典:厚生労働省
2
企業型DCのマッチング拠出制限が撤廃
加入者掛金は事業主掛金を超えてはならない、という制限が2026年4月1日施行で撤廃予定。会社員にとっては、企業型DCをより使いやすくする改正です。出典:厚生労働省
iDeCoは70歳未満まで加入・継続拠出可能へ
一定要件のもとで、60歳以上70歳未満までiDeCoを活用した資産形成を継続できるようになる予定です。公式リーフレットでも、働き方にかかわらず70歳までの資産形成継続が案内されています。出典:厚生労働省PDF
ここが大事です。
「上限が同じになる」ことと、「制度の価値が同じになる」ことは別です。
iDeCoと企業型DCは、掛金の見え方も、手間も、仕組み化のしやすさも、法人・個人への効き方も違います。
📊 ひと目でわかる! iDeCo vs 企業型DC 比較一覧表
| 比較項目 | iDeCo | 企業型DC |
|---|---|---|
| 制度を用意する人 | 自分で加入する | 会社が導入する |
| 掛金を出す人 | 原則 本人 | 原則 会社(事業主) |
| 節税メリット | 掛金が全額所得控除 | 会社拠出で給与課税を抑えやすい設計が可能 |
| 運用益 | 非課税 | 非課税 |
| 受取時 | 一時金なら退職所得控除、年金なら公的年金等控除 | 一時金なら退職所得控除、年金なら公的年金等控除 |
| 手間 | 申込・変更・管理を自分で行う | 制度があれば仕組み化しやすい |
| 向いている人 | 会社に制度がない人、自分で管理できる人 | 経営者、福利厚生を強化したい会社、仕組みで積み立てたい人 |
| 注意点 | 家計を圧迫しやすい、放置しやすい | 導入コスト・制度設計・事務負担がある |
| 2027年以降の見方 | 第2号被保険者は共通上限6.2万円へ整理 | 企業年金等と合計で6.2万円上限の考え方 |
| CFPのひと言 | 個人で頑張る制度 | 会社ごと仕組みにする制度 |
iDeCoの税制優遇は、拠出時の全額所得控除、運用益非課税、受取時の公的年金等控除または退職所得控除です。これは厚生労働省のiDeCo概要でも明示されています。出典:厚生労働省 iDeCo概要
💬 CFP20年の実感
この比較表だけ見ると、「じゃあ会社員は企業型DC、個人事業主はiDeCoで決まりですね」と思いたくなります。ですが、現実はもっと複雑です。なぜなら、掛金の負担元、家計の余力、会社の制度の質、退職金の有無、受取時期まで含めると、同じ立場でも答えが変わるからです。
👥 会社員・経営者・個人事業主別 おすすめパターン早見表
| 立場 | まず確認すべきこと | 基本おすすめ | こんな人はiDeCo寄り | こんな人は企業型DC寄り | CFP20年の実務的結論 |
|---|---|---|---|---|---|
| 会社員 勤務先制度を確認する人 | 勤務先に企業型DCがあるか、会社掛金はいくらか、マッチング拠出の有無、DBの有無 | 基本おすすめ 会社制度が整っているなら企業型DC優先 | 会社に企業型DCがない/制度が弱い/自分で主体的に積立したい | 会社がしっかり掛金を出している/制度説明がある/福利厚生が充実 | 勤務先制度を確認せずにiDeCoを始めるのは危険。まず会社制度の把握が先。 |
| 経営者・役員 法人と個人を両方見る人 | 法人か個人か、利益水準、役員報酬、退職金設計、社会保険負担、従業員への活用意向 | 基本おすすめ 多くの場合、企業型DCの検討価値が高い | まずは個人で小さく始めたい/法人導入コストを抑えたい | 法人で利益が出ている/退職金設計をしたい/福利厚生強化もしたい | 経営者は制度比較ではなく、法人と個人の資金設計で判断すべき。 |
| 個人事業主 自力で老後資金を作る人 | 法人化予定の有無、収入の安定性、国民年金基金・小規模企業共済の活用状況 | 基本おすすめ まずはiDeCoが有力 | 現在のまま個人事業で続ける/まず所得控除を取りたい | 将来法人化を考えている/従業員雇用や退職金設計も視野にある | 個人事業主のままならiDeCo中心。企業型DCは法人化を含めて検討。 |
🧭 おすすめパターンを一言で言うとこうなります
| タイプ | おすすめパターン | 理由 |
|---|---|---|
| 会社に企業型DCがない会社員 | 優先検討 iDeCoを優先して検討 | 自分で老後資金を作る必要があるため |
| 会社に企業型DCがあり、会社掛金もある会社員 | 優先検討 まず企業型DCを最大活用、そのうえで必要ならiDeCo検討 | 会社制度を使わないのはもったいないため |
| 中小企業の経営者・法人オーナー | 優先検討 企業型DCを軸に検討し、必要に応じてiDeCoも比較 | 個人だけでなく法人全体の資金設計に効くため |
| 個人事業主・フリーランス | 優先検討 iDeCo+他制度(国民年金基金・小規模企業共済等)を組み合わせて検討 | 企業型DCはそのままでは使いにくく、老後資金を自力で積み上げる必要があるため |
| 50代以降で老後準備が遅れている人 | 必須 制度の優先順位を個別診断してから着手 | 使える年数・受取設計・家計余力で最適解が大きく変わるため |
⚠️ ここを誤ると危険です
iDeCoと企業型DCは、「両方使える」ことと、「両方使うべき」ことが同じではありません。
制度を増やしただけで満足してしまい、家計・NISA・保険・住宅ローン・教育費・退職金の全体設計が崩れるケースを、私は何度も見てきました。
🏢 会社員・経営者・個人事業主別に、もう少し踏み込んで考える
① 会社員の方へ —— まず会社制度を確認してください
会社員の方は、iDeCoを検討する前に、まず勤務先の制度を確認すべきです。企業型DCがあるのか、会社掛金はいくらか、マッチング拠出はあるのか、DBはあるのか。ここを確認せずに制度比較を始めても、答えは出ません。
もし勤務先に企業型DCがあり、会社がしっかり掛金を出し、制度説明もあり、商品ラインナップも悪くないなら、その制度はかなり強いです。さらに、企業型DCのマッチング拠出制限は2026年4月1日に撤廃予定で、会社員にとって追い風になります。出典:厚生労働省
一方で、会社に企業型DCがない、または制度があってもほぼ機能していないなら、iDeCoは非常に有力です。公式リーフレットでも、企業年金がない会社員のiDeCo拠出限度額が月2.3万円から6.2万円にアップする例が示されています。出典:厚生労働省PDF
② 経営者・役員の方へ —— iDeCoで十分か、は慎重に判断を
経営者の方ほど、「iDeCoでも6.2万円まで使えるなら、もうそれでいいのでは?」と思いがちです。しかし、私は多くの場合、経営者こそ企業型DCの検討価値が高いと考えています。
理由は明快です。経営者の老後資金設計は、個人の節税だけでは終わらず、法人の利益、役員報酬、退職金規程、社会保険、従業員への福利厚生、採用・定着まで含めて考える必要があるからです。iDeCoは優れた制度ですが、あくまで個人で頑張る制度。企業型DCは、会社ごと仕組みにする制度です。
③ 個人事業主・フリーランスの方へ —— iDeCoは強い、でもそれだけでは足りない
個人事業主にとっては、まずiDeCoが非常に有力です。厚生労働省は、第1号被保険者のiDeCoと国民年金基金の共通拠出限度額を月額7.5万円に引き上げるとしています。出典:厚生労働省
ただし、個人事業主ほど、iDeCoだけで安心してはいけません。収入の変動、病気・廃業リスク、生活防衛資金、国民年金基金、小規模企業共済、将来の法人化まで含めて立体的に設計する必要があります。
💬 CFP20年の実感
同じ「会社員」「経営者」「個人事業主」というラベルでも、実際の最適解はまったく違います。私は、会社員には“勤務先制度の見落とし”、経営者には“法人と個人の分離不足”、個人事業主には“制度の単独利用”という失敗パターンを何度も見てきました。だからこそ、比較表のあとに必ず個別設計が必要なのです。
✅ この比較を見たうえで、私はこう結論づけます
iDeCoと企業型DC、どちらが得か——その問いに、万人共通の正解はありません。
老後資金は、ひとりひとり違います。年齢、年収、家族構成、勤務先制度、退職金の有無、法人か個人か、何歳まで働くかで、答えは大きく変わります。
だからこそ、本当に大切なのは、「iDeCoと企業型DCの比較」で終わらせることではなく、“あなたの場合、どちらをどう使うべきか”を設計することです。
この記事のいちばん大切な結論
比較表は、判断のスタート地点にはなります。
しかし、ゴールまでは連れていってくれません。
ゴールに必要なのは、あなたの家計、仕事、退職金、老後の働き方まで含めた個別設計です。
📬 こんな方は、今すぐ個別相談をおすすめします
- 会社に企業型DCがあるが、内容をほとんど理解していない
- iDeCoを始めたいが、いくら積み立てるべきか決められない
- 経営者として、iDeCoと企業型DCのどちらが有利か判断できない
- 個人事業主として、iDeCo・国民年金基金・小規模企業共済の使い分けがわからない
- 退職金・DC・iDeCoの受取タイミングまで含めて相談したい
- 「自分の場合、月6.2万円まで本当に使うべきか」を知りたい
ネット記事は一般論までしか書けません。しかし、老後資金は一般論で決めてはいけません。制度は知っていたのに、設計で損をした——そんなもったいないケースを、私はこれまで何度も見てきました。
制度が広がるほど、選び方は難しくなります。
老後資金は、ひとりひとり違う。
だからこそ、個別相談した人から、設計が変わります。
iDeCoか、企業型DCか。
あるいは、どう組み合わせるか。
その答えは、比較表ではなく、あなた専用の設計図の中にあります。
📚 公的資料元(公式リソース)
- 厚生労働省|2025年の制度改正
iDeCo・企業型DCの拠出限度額引上げ、マッチング拠出制限撤廃、加入可能年齢引上げの公式整理 - 厚生労働省|iDeCoの概要
iDeCoの税制優遇、加入対象者、掛金ルールの基本情報 - 厚生労働省 PDF|令和8年12月から iDeCoがパワーアップします!
掛金上限引上げ、70歳までの加入可能年齢拡大の公式リーフレット - 厚生労働省 PDF|私的年金制度の主な改正事項の施行スケジュール
2026年4月・12月の施行スケジュール一覧
▶ 次回 第4回(近日公開)
マッチング拠出解放&70歳加入延長——60代の「老後」が変わる
2026年4月のマッチング拠出制限撤廃、2026年12月のiDeCo加入可能年齢引上げは、60代の働き方と老後設計に何をもたらすのか。制度の「意味」まで踏み込んで解説します。
📩「私の場合、iDeCoと企業型DCのどちらがいい?」
そう思ったら、今が相談のタイミングです
比較表を見ても、最後の答えは「自分の場合どうか」に尽きます。
CFP20年の経験で、制度比較だけでなく、家計・税・退職金・老後の働き方・受取戦略まで含めて整理し、あなた専用の最適解をご提案します。
※ マスコミ・メディア関係者の取材、コメント依頼、セミナー登壇のご相談も歓迎しております。
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【山下幸子 やました ゆきこ】
CFP(ファイナンシャルプランニング技能士)/確定拠出年金診断士
20年以上にわたり、個人・法人の老後資産設計、節税戦略、企業型DC導入支援に携わる。数字を語るだけでなく、人生を変える提案をモットーに、数多くのクライアントの老後設計をサポート。マスコミ・メディア出演、セミナー登壇実績多数。
📚 シリーズ全5回 一覧
- 【第1回】税金の“三つの法則”を知らずに老後設計するな
- 【第2回】「退職所得」という最強の武器——2,000万円で747万円の差を生む仕組み
- 【第3回(本記事)】掛金6万2,000円に大統一!iDeCo vs 企業型DC——あなたはどちらを選ぶべきか
- 【第4回】マッチング拠出解放&70歳加入延長——60代の「老後」が変わる
- 【第5回】今すぐ動く人だけが得をする——改正をチャンスに変える行動プラン



