退職金とは、勤めていた会社などを退職する際に支払われるお金のことです。
退職金の支給は法律での定めもなく企業独自の制度となっているため退職金制度を導入しているかどうかは企業によって違いがあるほか、役職や勤めていた年数により
支給される金額も変わってきます。

退職金は金額も大きくなることから税金もかなり大きくなるのでは?と不安になる方も多いかと思います。
退職金には一体いくらの税金がかかるのでしょうか?
税金の種類や計算方法、税金の優遇制度などについても詳しく見ていきましょう。

 

退職金の受け取り方法について

 

まずは退職金の受け取り方法についてです。
退職金には主に2つの受け取り方法があります。
■一時金でまとめて受け取る方法
■年金として毎月分割で受け取る方法
受け取り方法の違いにより税金の計算にも違いがあります。
一時金としてまとめて受け取る退職金は退職所得として計算し、年金として毎月分割で受け取る退職金は雑所得として計算されます。

退職金の計算方法について

今回は、一時金でまとめて受け取る場合を例に詳しい計算方法を見ていきます。

一時金の場合、退職所得として扱われるため退職所得控除が適用されます。
退職金にかかる税金の計算式は以下の通りです。
(退職金-退職所得控除)×1/2×税率=税額

退職金は税制上優遇されている

続いて、退職金の税制優遇について詳しく見ていきましょう。
▼退職所得控除がある
退職所得控除は勤務年数によって大きくなり、大きくなればなるほどに支払う税金が少なくなります。詳しくは以下の通りです。

勤続年数

退職所得控除額

20年以下

40万円×勤続年数 ※

20年超

800万円+(70万円×(勤続年数-20年))

※退職所得控除額が80万円未満の場合は80万円

【例】勤続10年の場合
40万円×10年=400万円が非課税となる
【例】勤続40年の場合
 20年超の場合、勤続年数は-20年される為…
800万円+(70万円×(40年―20年))=2200万円が非課税となります。
▼1/2課税である
退職金から退職所得控除を引いて算出された退職所得の1/2しか課税されません。
▼分離課税である
給与所得などの総合課税は雑所得などの他の所得との合計額に対して税額を計算されますが、分離課税である退職金は他の所得とは合算されずに税金を計算してくれます。

 

このように、退職所得は支給額から退職所得控除額を引いた金額に、さらに1/2を掛けた金額がベースとなっており、税金の負担が軽減される措置が設けられています。

退職金の税制優遇の理由は、支給される金額が大きいことや総合課税とすると所得税全体に影響を与えてしまうという点もありますが、長年の勤務に対する労のねぎらいや退職後の生活を保障していく目的もあることから、所得税額がなるべく低くなるように税制上も特別優遇されているのです。

退職金にかかる税金の種類について

 

退職金にかかる税金は所得税と住民税と復興特別所得税になります。
所得税は個人の所得にかかる税金で、所得金額が増えるほどに税率が上がります。
詳細については下記の通りです。

A 課税退職所得金額

B 税率

C 控除額

1,000円~194万9千円

5%

0円

195円~329万9千円

10%

9万7,500円

330万円~694万9千円

20%

42万7,500円

695万円~899万9千円

23%

63万6,000円

900万円~1,799万9千円

33%

153万6,000円

1,800万円~3,999万9千円

40%

279万6,000円

4,000万円以上

45%

479万6,000円

【例】勤続年数40年で退職金が3000万円の場合
(3,000万円-2,200万円)×1/2=400万円
(400万円×20%-42万7,500円)×1.021 ←復興特別所得税
支払う所得税は38万322円となります。

続いて住民税についてです。
住民税とは都道府県民税と市区町村税をまとめたものを指します。
計算の方法は所得税と同じですが、税率は一律10%となっています。
・都道府県民税が4%
・市区町村民税が6% 合わせて10%が課税されます。

【例】勤続年数40年で退職金が3,000万円の場合
(3,000万円-2,200万円)×1/2×10%
支払う住民税は40万円となります。

所得税と住民税と復興特別所得税をすべて合計しますと
勤続年数40年で退職金が3,000万円の場合は、
【所得税】38万322円+【住民税】40万円=【合計】78万322円の税金となります。

3000万円に対し支払う税金は78万、税金が全体に占める割合は2.6%かなり税金がかからないのがわかります。※自分で積み立てたiDeCoやDCも退職所得控除を使い税金が計算されます。

 

▼国税庁HP

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/02_3.htm

▼日本年金機構HP

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/rourei/seikyu/20140421-31.html

手続きと注意点について

最後に退職金を受け取るのに必要な手続きや注意点などについて見ていきましょう。

まず退職金には確定申告の必要はなく、会社側で源泉徴収を行ってくれます。
ただし、退職する際には退職所得の受給に関する申告書の提出を忘れないようにしてください。この手続きを忘れてしまうと退職所得控除が適用されず、20.42%をかけた所得税(復興特別所得税)が源泉徴収されてしまいます。
確定申告をする事で戻ってきますが、忘れずに申告書を提出しておくと安心です。

退職金の税金についてご理解頂けましたでしょうか。
税制優遇など退職金には税金がかからないように配慮されている事もわかりましたね。
気になる方は計算式に当てはめて予想額を算出してみてはいかがでしょうか。