「老後資金2,000万円問題」が話題になったことも記憶に新しいですが、シニア世代にとって老後資金は切実な問題として関心があります。
2024年1月から新NISA制度が始まります。
新NISAとは現行の一般NISAとつみたてNISAを統合したもので、年間の非課税投資上限額の拡大や非課税期間の無期限化など現行のNISA制度をよりパワーアップさせた内容になっています。
50代、60代のまだNISAデビューをしていない方で、中には「今からNISAをして老後に間に合うのか?」「うまく運用できるだろうか?」と二の足を踏んでいる方もいるかもしれません。
しかし50代、60代の方こそ新NISAの活用方法がとても大事になっていきます。
年齢的にお金に余裕が出てくることもあり投資などにお金を回す傾向も高いですが、安易に投資をしたり使い方を間違えてしまうと損をしてしまうこともあります。
また50代以上になると近い将来退職などで収入が減ることも視野に入れなくてはなりません。
50代、60代の方が新NISAとどのように付き合っていくのが良いのかを詳しく見ていきましょう。
50代以上の方がやってはいけない投資とは?
50代以上の方が投資をする上での注意点はズバリ、退職金や老後のために貯めたお金をつぎ込んで事業投資や株式投資をしてしまうことです。
50代以上になるとどうしても運用期間が短くなってしまうため、短期間で利益を出そうとしたり、焦ってハイリスクな商品に手を出してしまう事もあります。
また、投資を始めたばかりで運用スキルが無いと、おすすめされるまま金融機関の言いなりになって損をしてしまうこともあります。
特に注意するべき3つの投資
① 毎月分配型の投資信託(たこ足配当の商品)
② 借金をしてする投資
③ ハイリスクハイリターンの投資
まずは①毎月分配型のたこ足配当の投資信託について見ていきましょう。
【たこ足配当とは】
十分な利益がないのに、過剰な配当金を出す銘柄や投資信託。
配当金が高いため魅力的に感じられるが、業績や財務状況に問題がある可能性があります
高利回りが魅力的で人気も高いですが、実際は資産を売却したり積立金を取り崩したりする事で運用益以上に分配金を払い続けてタコが自らの足を食べるような状態を指します。
投資信託の基準価格が下落しやすく、元本損失のリスクも高いので注意が必要です。
騙されないための見分け方として配当性向という指標を使用します。
配当性向=「1株あたりの配当金額÷1株あたりの利益×100」
これは利益の何%を配当に回しているかを表します。
一般的な配当性向は30%ほどですが、たこ足配当を行っている企業や投資信託は100%以上になっていますので注意してください。
続いて②借金をしてする投資についてです。
自分は借金をしてまで投資などしない、と思われる方がほとんどだと思いますが、不動産投資でローンを組んで行う投資があります。不動産投資は知識もスキルも必要な投資のため、素人がローンを組んで借金をしてまで行うなど、とてもおすすめできません。
利用する不動産投資ローンは変動金利で住宅ローンのように低くありません。もしも急激な金利上昇があった場合返済金額が増えて余裕資金がなくなる可能性があります。
売却しようとしても、時間がかかるのが不動産売買。現金が急に必要な場合もあるので、投資は余裕資金でかつ売却はしない覚悟がないと難しいです。
続いては③ハイリスクハイリターン投資についてです。
・FX
・暗号資産
・仕組債
・バイナリーオプション
・レバレッジ型投資信託
上記の投資は大きく儲けられる可能性もありますが、失敗した時の損失もとても大きくなるので注意が必要です。
退職後は収入が減少してしまう点を考慮して、リスクを負うよりもローリスクローリターンでコツコツ増やすのが良いでしょう。
自分のリスク許容度を知ろう
50代、60代の方が自分がやるべき投資は何だろう?と考えたときまず1番に考えなくてはならないのは投資商品の選択でなく自分のリスク許容度を把握することです。
様々な商品がある中で「どれが正しいか」「どれがお得か」などにこだわる前に、まずは自分の許容度を知り、運用にどれだけお金を回せるかを考えたうえで投資を始めるべきです。
老後の生活費、医療費など、貯金として必要な金額も把握しておくことも大切です。
こうして自分の許容度を確認したうえで、どの商品にいくら投資するのかを選ぶようにしましょう。
50代、60代におすすめの投資
自分の許容度を確認したら次は商品選びになるかと思います。
どれを選ぶかは自分の方針や目的に合わせることが重要ですが、そこが1番難しいのではないでしょうか。
50代、60代の方におすすめの投資を2つご紹介しますので今後の参考にしていて頂ければと思います。
【投資信託】
投資信託とは集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する商品。信じて託すのが投資信託、運用のプロにお任せすることです。とはいえ、プロに任せたといってもどの商品を選ぶのか?は自己責任です。長期的にみて(10年以上)リターンを出しているもの、運用成績が悪く解散しないものを選ぶ必要があります。
定率売却サービスを利用することで毎月売却代金をもらいながら運用を続けられ、生活に必要な資金を取り崩すこともでき退職後の年金代わりとしての活用方法としてもおすすめです。
【高配当ETF・債券ETF】
高配当ETFとは株式の中でも配当利回りが高い銘柄で構成された上場投資信託を言います。上場投資信託では高配当の銘柄に分散投資が可能な為、個々の銘柄の価格が下がった時でも損失を抑えることができるのが特徴です。
メリット
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分散投資: 高配当ETFは、複数の高配当銘柄を含むポートフォリオを提供するため、リスクを分散するのに役立ちます。単一の銘柄に依存するリスクを減少させ、ポートフォリオ全体の配当を安定化させることができます。
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簡便性: ETFは取引が簡単で、株式市場で日中取引されます。ETFの株式を購入・売却するプロセスは、個別の株式と類似しており、取引手数料も一般的に低いです。
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低コスト: 高配当ETFは、多くの場合、低い管理費用(エクスパンス・レシオ)を持つため、長期的な投資家にとってコスト効率が高い選択肢です。
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リーブンキャップ対策: 高配当ETFは、配当を通じて収入を得たいリタイアメントプランなどの投資家に人気があります。配当収入は生活費やリタイアメント資金の一部として使うことができます。
デメリット
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リスクの認識: 高配当ETFは一般的にリスクが高い銘柄を含んでいるため、価格の大きな変動が起こる可能性があります。高配当を提供する企業は、業績が不安定なことがあるため、慎重な選択が必要です。
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配当の変動: 高配当ETFの配当は、ETFが保有する資産の配当に依存します。資産内の銘柄の配当が変動すると、ETFの配当も変動します。
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キャピタル・ゲインに依存: 高配当ETFの価格は、資産内の株式や債券の価格変動に影響を受けます。配当金だけでなく、キャピタル・ゲイン(株式の価格の上昇)も収益の一部を形成します。
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分散不足: 高配当ETFは、高配当を提供する特定のセクターや産業に焦点を当てていることがあり、ポートフォリオの分散度が不足している場合があります。これにより、リスクが集中化する可能性があります。
債券ETFとは債券で構成された上場投資信託を言います。分散投資が可能で、通常の債券と違って満期がないところが特徴です。
メリット
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分散投資: 債券ETFは、複数の債券を含むポートフォリオを提供するため、リスクを分散できます。個別の債券に投資する代わりに、多くの異なる発行体や債券種別に分散投資できます。
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市場の流動性: 債券ETFは市場で日中取引され、株式市場と同じように簡単に売買できます。これにより、債券の売買が通常の債券市場よりも柔軟に行えます。
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低コスト: 債券ETFは一般的に低い管理費用(エクスパンス・レシオ)を持つため、コスト効率が高い投資手法です。これは、長期的な投資家にとって特に魅力的です。
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収益の安定性: 債券は通常、定期的な利払いを行うため、安定した収益を提供する傾向があります。これは、リスクを管理し、収益を安定化させるために役立つことがあります。
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リスクのコントロール: 債券ETFは、株式に比べて一般的にリスクが低いとされます。特に、政府債券や投資適格格付けの高い企業債券に投資するETFは、リスクが比較的低いです。
デメリット
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金利リスク: 債券の価格は市場金利と逆相関するため、金利上昇時に債券ETFの価格が下落する可能性があります。これは、長期債券ETFほど影響が大きい傾向があります。
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クレジットリスク: 一部の債券ETFは、信用格付けの低い債券に投資している場合があり、発行体のデフォルトリスクが存在します。クレジットリスクに対する注意が必要です。
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価格の剥離: 債券ETFの価格は、そのETF内の債券の実際の市場価格と異なる場合があります。これを「剥離」と呼び、特に流動性の低い債券に投資するETFでは問題となることがあります。
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運用ポートフォリオへのアクセス: 債券ETFの実際のポートフォリオは一般に非公開であり、投資家は正確な債券の組成を知ることが難しい場合があります。
資産運用、その前に
退職金や老後のために貯めたお金、できれば資産運用して増やしたいと考えているかたも多いと思います。
しかし、資産運用よりもまずは収入よりも支出を抑えて生活できる環境作りが大切です。
資産運用しなくて済むならそれが1番ですし、リスクを負わずに悩みの無い老後の生活を送ることも幸せな老後生活といえます。
現状の生活を確保した上で、ぜひ挑戦してみたいという方もいるかと思います。
今回お伝えした注意点なども踏まえて、老後資金にいくら必要か?ゴール設定をして、インフレに負けない程度に余裕資金で、資産運用をしてみるのも良いかもしれません。