老後のための備えとして確定拠出年金をしている人は多いかと思います。
しかし、退職金と確定拠出年金の受け取り方次第で払う税金が大幅に変わってくる可能性があることをご存知でしたか?
確定拠出年金には個人型(iDeCo)と企業型がありますが、受け取り方は共通しており下記の3種類があります。
・一時金での受け取り(一括受取)
・年金での受け取り(分割受取)
・一時金と年金を併用した受け取り
この中で税金がもっとも少ないのは一時金での受け取りとなります。
退職金と確定拠出年金を一時金で受け取ると、「退職所得」として扱われ、退職所得控除を利用することができます。
退職所得控除はとても税優遇の大きい制度で、こちらを利用すると所得税や住民税を大幅に少なくすることができます。
一方、年金として受け取る場合は「雑所得」となり、他の所得と合わせての総合課税になります。
毎年、所得金額に応じて所得税や住民税が算出されるので、手取り額の合計は一時金で受け取るよりも少なくなります。
今回は一時金を受け取るときに注意すべきタイミングや、退職金と確定拠出年金の関係についてご説明していきます。
一時金として受け取る際のポイント
退職金と確定拠出年金を一時金として受け取るタイミングには3つのパターンがあります。
①退職金を一時金で受け取った後、確定拠出年金を一時金で受け取る場合
退職金を受け取ってから確定拠出年金を受取るまでの期間がポイントで、20年経過せずに確定拠出年金を受取ると退職所得控除が利用できない為、結果支払う税金も増えてしまいます。
さらに確定拠出年金の受給開始年齢の上限は75歳なので、遅くとも55歳までに退職金を受け取らなければならず、あまり現実的ではありません。
②退職金と確定拠出年金を同時に一時金として受け取る場合
同時に受け取る場合は、退職金と確定拠出年金を合算して退職所得控除の計算がなされます。例えば、勤続年数38年の場合は一時金の合計が2060万円を超えると退職所得控除からオーバーする額が多くなり、支払う税金が増えるということになります。退職所得控除を超えた金額の二分の一が課税対象になりますので、要注意です。
③確定拠出年金を一時金で受け取った後、退職金を一時金で受け取る場合
確定拠出年金を退職所得控除を利用して受け取った後、退職金を受取るまでの期間が5年以上経っていれば、再び退職所得控除が利用できます。
これが【退職金の5年ルール】です。
2度この控除が使えることにより、退職所得が大幅に減り税金は一番安くなります。
確定拠出年金の加入年数と退職金の勤続年数は退職所得控除の計算において両方とも適用されるので、退職所得控除をフル活用できるのです。
Aさんの場合(退職金2000万円:勤続年数35年
確定拠出年金500万円:加入年数15年)
詳しい計算方法は割愛させていただきますが、結果は以下のようになります。
① 退職金→確定拠出年金 20年空けなければならず現実的にはかなり難しい
② 退職金と確定拠出年金を同時に受け取る 所得税・住民税は約56万円
③ 確定拠出年金を先に受け取る→その後退職金を受け取る
退職金の5年ルールを使うことができれば、確定拠出年金の加入年数15年と退職金の勤続年数35年の両方が使えるため、所得税・住民税は約11万円
一方、確定拠出年金と退職金の受け取りに例えば4年間の期間が空き、5年ルールを使えない場合は、所得税・住民税は約139万円となります。
【退職所得控除の算出方法】
勤続年数(加入年数)
・20年以下:40万円×年数
・20年以上:(年数-20年)×70万円+800万円
【退職所得の算出方法】
(収入金額-退職所得控除)÷2
【税金の算出方法】
・所得税
退職所得×所得税率×1.021
(所得税税率は国税庁のHPにある税額表を参考にしてください)
・住民税
退職所得×10%
自分に合った選択を
人によってライフプランは異なりますので、まずは自分にとって何が最適かを知ることが大切です。
税金を抑えたいなら、退職金5年ルールを活用するのがよいでしょう。
まずは確定拠出年金を一時金で受取り、その後5年あけて退職金を一時金で受取る方法が一番お得でおすすめです。定年雇用延長などの制度や継続雇用後に、退職金を受け取れる制度があれば活用したいものです。
(会社によって可能かどうか規定がありますので、人事・総務に相談してください
退職金の受け取り方だけでなく、資金を減らさないように使うことも重要です。ライフプランとマネー計画、トータルに考えましょう。どこから手を付けていいかわからない・・・・その場合はプロのアドバイスを参考にしてください。
2024年12月追記
令和6年税制改正で、5年ルールが10年ルールに改悪となりました
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