退職金を手にすると半年以内に投資へ
インフレが2%続くと、1000万円の預金を金利が付かない円定期預金に預け続けると、20年で価値は半分の673万円になります。これは大変・・・何とかしなければということで、ある調査ではサラリーマンの最後のお給料「退職金」を手にすると6か月以内に現金預金から投資商品に置き換わっているようです。ですが、投資初心者が、虎の子の退職金で投資してはいけない金融商品があります。大事な退職金を溶かさないようくれぐれもご注意ください。
退職金で投資してはいけない金融商品「仕組債」
仕組債は、債券とデリバティブを組み合わせた複雑な金融商品で、投資家により高いリターンを提供することを目指しています。必要な手数料も高いのですが、複雑な金融商品なので、手数料もよく理解することなく投資しているケースが多いようです。
ハイリスクなため、株式・債権市場が暴落すると、あっという間に投資元本を失います。
定期預金の解約金や退職金で仕組債を購入し、リーマンショック、コロナショックで損をしたという話は珍しくありません。
さすがに金融庁のメスが入り、高い利回りをうたう仕組み債を概ね、メガ銀行では販売停止、ほとんどの証券会社では、富裕層以外には積極的に勧誘しないなど「販売の見直し」が広がっていますが、仕組債自体が消滅したわけではありません。
大事な退職金をよく分らないものにつぎ込まないようにしましょう。
【仕組債投資 事例】
仕組債でA株式が500円を下回る場合(ノックイン)株で返還(暴落しているため大損)500円以上の場合のみ、現金で増えて戻ってくる。
株式が暴落すれば(ノックイン)二束三文の株で戻され、大きく投資元本割れます。仕組債には、多額の手数料が含まれており、販売元は損しないが、損をしたのは投資家だけとなります。
退職金で投資してはいけない金融商品「退職金運用プラン」
定期預金と投資信託やファンドラップなどをセットにしたものです。定期預金の金利は7%と目が飛び出るような金利に思わず釘付けになりますが、期間は3か月と短期間です。
銀行や信託銀行、証券会社などで販売されています。多額の金額がご自分の口座に振込みされると最初に知るのが銀行です。必ずといっていいほど電話勧誘がありますので要注意です。
【退職金運用プラン 事例】
◎退職金1000万円のうち500万円定期預金、500万円をフアンドラップ3か月の円定期預金の場合、3か月後の利息受取額(税引後)の概算は、約69,725円。
※500万円×7.0%×3/12か月=87,500円
87,500円-税金17,775円=69,725円(税引後受取利息)
500万円を3か月預けるだけで、69,725円だとうれしいのですが、3か月後は普通金利となります。
セット商品ですので500万円のファンドラップには、販売手数料3%・・・15万円が最初に差し引かれ、かつ運用し続けるだけでかかる費用である信託報酬が2.2%、換金する際には、0.5%手数料がかかります。
3か月の円預金で得た利息6万9725円より支払う手数料は多いです。投資成績がよければ問題ないのですが、株式などに一括投資をするとリーマンショックでは、1年で500万円が250万円になったりしました。
長期投資とはいえ、年金生活では、いつ介護資金不足や生活資金不足になるかもしれないため、一括投資で株などのフアンドラップへは手数料も高く、リスクテイクのため、オススメできません。
退職金で投資してはいけない金融商品「株式投資」
「株式投資といっても短期売買を繰り返すのではく、高配当の安定した優良株を保有し続けその配当が得られ、その配当が老後の生活費の足しになるといいなぁ…」「短期で売ったり買ったりするのは無理だが、高配当株を保有し続けることはできそう」「ほかにも現金預金はある。多少変動しても高配当株だから、大丈夫だろう」といった甘い判断で高配当の株を退職金で一括購入することは、「危険」です。
必ずもうかる、必ず配当がもらえるなどはありません。余裕資金であったとしても長生きすれば、預金も減り余裕資金はなくなります。
退職すると「時間」の余裕はたくさんあり、株式投資には興味や好奇心を引かれる要素が多く、それが投資を始めるきっかけとなることがあります。投資自体は悪いものではありませんが、退職金を溶かさないように気を付けましょう
【株式投資 事例】
2008年に退職金3,000万円を受け取ったAさんは、○○電力の株に投資することを決めました。当時、1株あたり60円の配当があり、株価は3,000円でした。しかし、2011年の東日本大震災後、○○電力の株価は大幅に下落し、2012年1月には153円まで落ち込みました。これにより、Aさんの投資額は3000万円から153万円へ減少し、配当金も得られなくなりました。
最後に
退職金は会社員の最後の給料です。住宅ローンの返済や家のリフォーム、夫婦の介護資金や病気入院費用など、当面必要なくてもいつかは使う日が来ます。その時のために少しでも増やしたいという気持ちから、やったこともない、よくわからない金融商品に手を出してしまいます。
どの金融商品を選ぶ時でも、それはご自分にあっているか?何のために投資するのか?その目的やゴールを設定すべきです。そうでないと取る必要のない人でも、リスクテイクし、大切な退職金を失うことにつながるからです。