老後に備える保険・・・個人賠償責任保険

 

 

重度の認知症で徘徊し、線路内に入りお亡くなりになった男性(91歳)の事故に関して、JR側が男性の遺族に損害賠償責任(列車を遅延させてしまった)を求めた裁判、おととい、最高裁で判決が下りました。

ご遺族の妻は要介護状態であり、また男性のお子様は同居ではなく別居であったため、「監督義務者」でないことから、720万円の支払い義務はないということでした。

 

この事故が発生したのは2007年ですから最高裁まで9年かかったことになります。

その間のご遺族のご心労、裁判の費用も含めて大変だったとお察しいたします。

 

超高齢化社会、現在認知症の方は約462万人ですが、10年後にはその1.5倍の700万人、65歳以上の5人に1人は認知症患者と予想しています。

 

NHKの調査(2012年)によると、認知症による徘徊で行方不明となり警察への届け出件数は9607人。

 今後この人数はさらに増加する見通しです。

 

このような状況から、高齢者、老後に備える保険として、個人賠償責任保険が挙げられます。

 

保険金を支払う、支払われないというのは、認知症の度合いにもより、有責か無責かで判定が変わるところでもあり、何かあれば必ずこの保険で・・・とは言えません。ですが、一般的に、このような事件により賠償請求された場合に「身を守る保険」として、加入を検討したほうがよいでしょう。

 

「個人賠償責任保険はどんな保険?」

 

個人またはその家族が、日常生活で誤って他人にケガをさせたり他人の物を壊したりして、損害賠償金や弁護士費用などを負担した場合の損害を補償する保険です。

 

「どんな時に支払われるの?」

 

他人の「身体」や「財物」に損害を与えた場合が対象となりますので、他人への名誉毀損やプライバシー侵害といったケースは補償の対象外となります。

 

1.買い物中に陳列商品を落とし破損させた。

2.飼い犬が他人を噛んでケガをさせた。

3.子供が駐車場に停めてあった他人の車をキズつけた。

4.自転車で走行中に歩行者とぶつかり後遺障害を負わせた。

5.マンションの自宅の風呂場からの水漏れにより、階下の戸室の家財に損害を与えてしまった。

6.ガス爆発によって、隣の建物を損壊させた。

7.ベランダの鉢植えが落下して歩行者の頭に当たり死亡させた。

 

(日本損害保険協会HPより)

 

 ※他人にケガをさせた、物を壊したということで保険金が支払われる対象ですので、もしも認知症の方が、徘徊中に線路に立ち入り電車が遅れた被害のみでは、支払い対象になりません。

 

今回のような認知症の方が起こした事故について、ご本人は認知症のため「責任能力がない」ためご本人にはその責任は問われないのですが、ご本人の親権者またはその他の監督義務者が、損害賠償請求される可能性があります。

 

その場合、この個人賠償責任保険の支払い対象の範囲は

 

・本人

・本人の親権者およびその他の法定の監督義務者

・本人の配偶者

・本人もしくはその親権者または本人の配偶者と生計を共にする同居の親族

・本人もしくは、その親権者または本人の配偶者と生計を共にする別居の未婚の子

 

※A損害保険会社約款より抜粋・すべての個人賠償責任保険の約款が、監督義務者にも補償の支払い対象範囲を広げているわけではありませんので、保険会社に確認してください。

 

 

もしも、この認知症の男性が個人賠償保険に加入し、本人の親権者およびその他の法定の監督義務者に対して、損害賠償請求されたら、720万円の損害賠償請求金は、保険金の支払い対象になった可能性があるということです。実際には詳しく調査しないと断言できないということですが。(複数の保険会社ヒアリング調査より)

 

現実には、この個人賠償責任保険は単独で加入することはできなくて、

「傷害保険」「住宅総合保険(火災)」「自動車保険」に特約として付加されることになります。

 

 

特約保険料は、月換算で数百円程度ですので、上記保険のいずれかにセットで加入しておくと安心でしょう。