何が起こるか分からないこの時代、なるべく貯蓄を減らしたくない・むしろ増やしたいとお考えの方も多いのではないでしょうか。
人生において大きくのしかかってくる住宅ローンの返済、お金を貯めてまとまったお金を『住宅ローンの繰り上げ返済に使うのが良いのか』それとも毎月コツコツ『積立投資をスタートするべきか?』で迷う方が増えている様です。
では、それぞれのメリット・デメリットはどんなところにあるのでしょうか。
また、どのように判断するべきかについてご紹介いたします。
そもそも住宅ローンの繰上げ返済とは?
繰り上げ返済とは、元金の一部または全部を当初の予定よりも前倒しで返済する事です。これによって、繰り上げ返済した元金部分に対応する金利を支払わずに済みます。住宅ローンの期間を短縮するタイプと期間は変わらず、いまの返済金額を軽減するタイプがあります。
住宅ローンの繰上げ返済 メリット・デメリット
一般によく利用されている住宅ローンタイプは、「元利均等返済」。その場合、返済当初は、毎月の住宅ローン返済額に占める金利の割合が多く、ほとんど金利を返済しているイメージです。ですが、返済年数が経つにつれ、徐々に金利部分が減少し、元金の返済に充てられる部分が増加していきます。
返済スタートから早い段階で、繰り上げ返済するとそのお金は元金返済に充てられるため、「将来支払うはずだった金利が節約できる」というメリットがありますが、繰り上げ返済のデメリットとして、資金不足のリスクが挙げられます。つまり、繰り上げ返済によって将来の支払金利が節約できる一方で、短期的には手元のお金が減ってしまうことになるのです。
よく、繰り上げ返済は余裕資金で・・・と言われますが「余裕がある」とはどういうことか?たとえば、お子様の教育資金が「想定外にお金のかかる進路」となった場合、繰り上げ返済してしまった資金があれば、奨学金や教育ローンを利用しなくても済んだ・・・と後悔することもあります。
積立投資のメリット・デメリット
積立投資のメリットは、タイミングを気にせず、コツコツ長期的に投資を継続することで、値動きを味方につけることができ、さらに分散を加えることでリスクを抑えながら、世界全体の成長を取り込んでお金を殖やしていくことが魅力です。長期的には、3%~10%の利回りを期待できるかもしれません。現状では、銀行で積立預金をしていてもほとんど利息は付きません。積立・長期・分散投資をすることにより、銀行預金では得られないリターンを得ることも可能でしょう。
ただし、損をしにくい方法を選んでいても、絶対に損をしないわけではありません。
すぐに必要なお金まで投資に回してしまったり、偏ったものに投資してしまったりすると、大きな損を出してしまう可能性があるので、将来の目的や投資金額を検討し、家計に無理のない範囲で投資を行うと良いでしょう。
住宅ローンの繰上げ返済より、投資をする方が有利?!
一般的には住宅ローンの繰上げ返済より投資をする方が有利と言われています。
その理由についてシミュレーションで具体的な例を見ていきましょう。
【例】
〈条件〉
変動金利 0.6%
借入期間 35年
借入額 3000万円
■ 住宅ローンの繰上げ返済をした場合
※10年目から毎月1万円を貯蓄し、8年で96万円を貯め、その資金で繰上げ返済を行う
・繰上げ返済前 利息3,267,427円
↓
・繰上げ返済後 利息3,169,580円
となるので18年目に100万円繰上げ返済したら10万円ぐらい減りました。
■ 投資をした場合
※10年目から毎月1万円をつみたて投資を年利3%で運用する
こちらでシミュレーション計算すると1,083,474円となります。
元本は960,000円なので
1,083,474円−960,000円=12万円
なので、増えたお金は12万円となります。
このように投資をした場合は、2万円ほど有利になります。
住宅ローン=借金!リスクを考えると繰上げ返済?!
シミュレーションは、7割の方が選択している「変動金利」で比較しています。変動金利は固定金利ではなく、大幅な金利上昇があると返済金額が増えますので、繰り上げ返済が優位になるかもしれませんが、今回のシミュレーションでは、大幅な金利上昇はないと仮定して、数字だけを見ると投資をした方が有利です。
しかし、住宅ローンはいわゆる『借金』です。それを背負うということは、精神的にプレッシャーに感じることもあります。たとえば、もしも会社が傾いてつぶれそうになったら・・・重い病気や事故で今まで通り働けなくなったら・・・リストラにあったら・・・返済開始から、早い段階で金利上昇し、返済金額が増えてしまったら・・・などなど住宅ローン返済に不安を感じない方はいないと思います。
一方で、住宅ローン=「借金」を背負うことにより、必ずしも生活そのものが苦しいとは言えません。マイホームを持ち、それが終の棲家となり、賃貸暮らしの住まいでは得られない住空間で暮らす・・・それは住宅ローンのリスクの引き換えにしか得られないもの。年金不安のある老後生活にとって、家賃の支払いがないのは、何事にも代えがたい「安心」を手に入れることができます。
重要なことは、「住宅ローン=借金」が他のライフイベントを脅かさない、金利が上昇したとしても影響がない、「身の丈に合った住宅ローン」であることです。
まとめ
これから先の未来、何があるかは誰にも予測出来ません。
今まで見た事もない大きなリスクが、私たちのもとに降り掛かってくるかもしれません。
そんな時に貯蓄ができていれば、物理的に味方になるのはもちろん、精神的にも大きな味方になってくれる事でしょう。住宅ローンという借金のリスクをとってでも、安住の住処を手に入れることは、人生100年時代の老後生活に「安心」をもたらします。
住宅ローンを返済しつつ、お子様の教育資金や将来の老後資金の資産形成を同時に実現するためには、お一人お一人のリスクの所在やライフイベントの確認をし、住宅ローンを返済しつつ、資産を増やしてくという、「ブレーキ」と「アクセル」の両方をコントロールしていく必要がありますが、
とりあえず・・・手元資金を繰り上げ返済する、毎月の積立投資を1万円ぐらいやってみる、とかを場当たり的にやってしまうと、経済的な情勢の変化に対応できない可能性があります。
住宅ローンは何歳までに返済し、老後資金はいくら必要か?などシミュレーションすることで、解決可能です。
収入のうちいくら繰り上げ返済に回し、いくら積立投資をすればよいのか?お金に振り回されることなく、リタイアメント生活を安心して暮らせるようには?
ご自分では無理、わからないという方は、プロのアドバイスも取り入れてはいかがでしょう。