2022年10月より「106万円の壁」が改訂されます。
この改定によって、扶養内で働いており社会保険料を納める必要が無かった方や、労働条件を満たしていなかったので社会保険料を納める必要が無かった方が、勤め先の社会保険に加入しなければならない可能性が出てきました。
パート年収が106万円を超えると、たちまち社会保険料15万3113円が発生…月約1万2760円(15%減)の手取り減となります。
今回はこの「106万円の壁」の改定についてお話していきます。
年収106万円の壁とは?
「106万円の壁」とは、社会保険への加入が必要となる収入の基準を指します。
ただし、106万円の壁が適用されるのには一定の条件があり、その条件を満たした場合にのみ適用されます。
従業員が500人を超える会社でパートやアルバイトとして働き、次の要件に当てはまる方は、勤め先の社会保険に加入しなければなりません。
・1週の所定労働時間が20時間以上
・雇用期間が1年以上見込まれる
・月収が8万8000円以上
・学生でない
要件の1つである「月収が8万8000円以上」は年収に直すと「約106万円以上」であり、それ未満であれば勤め先の社会保険への加入は不要でした。
これが「106万円の壁」と呼ばれる根拠です。
「106万円の壁」が作られた背景には、2000年代から起こりつつある無年金、低年金問題が存在します。
会社で働いている人、正社員は3500万人ほどいますが、非正規雇用者は、2000万人、全体の4割は非正規雇用者でその内、1000万人は厚生年金に加入していない状況。
働き方が変化し、正社員として働く人口が減少し、パートで働く主婦が、扶養内で働く人口が増加したため、年金の破綻を危惧した厚生労働省が「年収106万円以上」の方を社会保険への加入対象としました。
2022年10月からの「106万円の壁」適用条件
2022年10月からは、社会保険への加入対象が次の適応条件に改訂されます。変更点は勤め先の従業員の任数が500人以上⇒101人以上に変更になりました。
・所定労働時間が週20時間以上
・1カ月の賃金が8.8万円(年収約106万円)以上
・勤務期間が2ヵ月超
・勤務先の従業員が101人以上の会社
・学生は対象外
今まで社会保険料を支払っていなかった方が、社会保険料を支払うことによって将来の年金は増加しますが、月収が15%も減少することになります。
また、配偶者の扶養内で働いていた場合、今までは配偶者の会社の健康保険証を使用していましたが、改定後の要件を満たすとご自身の務め先で健康保険証を作成する必要があります。
この「106万円の壁」の従業員規模101人以上はさらに小規模の会社が対象となり、2年後の2024年には“51人以上”にまで広がります。
これまでは『106万円の壁』は大きな会社だけでしたが、2022年.2024年の改定により、中小規模の会社であっても、社会保険に加入するようになり、厚生労働省によると、65万人のパートタイマーが社会保険に加入することになると見込んでいる模様です。
「106万円の壁」を越えたときのメリット・デメリット
「106万円の壁」を越えたときのメリットは、
「年金の増加」「医療保険の増加」「障害厚生年金の支給」の3点です。
社会保険に加入すると保険料が差し引かれるため、手取りの額面は減ってしまいますが、
社会保険料に見合った厚生年金が支給されるようになり、老後の生活が安定しやすくなります。
そして、健康保険の被保険者になると、業務外の病気や怪我で休業時に給付される「傷病手当金」や、出産時の「出産手当金」といった手当金が給付されます。
また、障害基礎年金にはない「障害厚生年金」や「遺族厚生年金制度」によって、万が一のときにも手厚い保障が受けられます。
次に、「106万円の壁」を越えたときのデメリットですが、それはズバリ!
「手取り額が減ってしまう」ことです。
社会保険が手厚いというメリットを理解していても、手取り額が減ってしまうのは、日々の家計のやりくりをする上で社会保険料や税は手痛い支出です。
まとめ
106万円の壁を乗り越える手段は「労働時間を減らして月収を8万8000円未満にする」か「今までの1.2倍以上働く」の選択になるでしょう。
社会保険料をいくら支払うかは、「賞与・残業代・通勤手当」込みの金額をもって算定されますが、106万円の壁による「月収8万8000円」の判定基準は「賞与、残業代、通勤手当」が含まれませんので、「基本給」が月々8万8000円以下であることが重要です。
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